検証:Level 3
Level 2は「十分な数の検証対象、複数の投資期間、固定された開始時期」というある程度柔軟な検証でした。Level 3では、「十分な数の検証対象、十分な数の投資期間、十分な数の開始時期」までさらに進めて、普遍的な法則に近づきましょう。いよいよ、検証のクライマックスです。
検証対象: Level 2と同様の8投信銘柄。株式1,000銘柄以上、国は米国・日本・先進国・世界をカバーする。
投資開始時期:1日ずつずらして検証する。例えば、期間が2021/01/01〜2022/12/31の場合、2021/01/01〜2022/12/31、2021/01/02〜2022/12/31、・・・、2022/01/01〜2022/12/31、の約250パターン(毎営業日)を検証する。なお、検証期間が短すぎると結果に偏りが出るのは明白なので、期間は最短でも1年とします。こうすることで、いつのタイミングで積立を開始したとしても、市場の状況に影響されずに、より普遍的な法則に近づきます。そうでないと、例えば、運良くコロナショックの底で積立を始めた場合はより利益が出るし、逆に、運悪くコロナラリーのピークで始めた場合はより利益が少なくなります。
投資終了時期:投資は長期ほど安定した資産形成になるという思想のもと、投資終了期間は一律、現時点で取得できる最新データの2023/03/31までとする。
検証期間:上記のように投資開始時期をずらしていけば、検証期間もずらしたパターンだけ増えていきます。検証期間が短すぎると結果に偏りが出るのは明白なので、期間は最短でも1年とします。
検証金額:[毎日積立] 1日あたり1,000円 vs. [毎月積立] 1ヶ月あたり 1,000円 X 該当月積立可能日数(営業日)
投資開始時期を17,584パターンに増やしても、基準価格より平均購入価格の方が安く買えることには変わりません。以下では、毎日積立と毎月積立のWinスコア表を示します。つまり、それぞれのTarget条件で、毎日積立(Daily)と毎月積立(Monthly)どちらがより有利だったかの勝ち点表を作ります。
考察3−1:平均購入価格
平均購入価格の平均値:
まず、平均購入価格の平均値を比較します。例えば、2011/02/01〜2023/03/31の期間中に積み立てた場合の平均購入価額が10,000円、2018/02/01〜2023/03/31が11,000円、2021/02/01〜2023/03/31が15,000円だとしたら、この3つのパターンでの平均購入価格の平均値は、12,000円( = (10,000+11,000+15,000)/3 )。
下のWinスコア表の見方は、例えば、Target 1(eMAXIS全世界株式インデックス)の場合、2011/02/01〜2023/03/31の期間で、2011/02/01〜2023/03/31、2011/02/02〜2023/03/31、・・・、2022/04/01〜2023/03/31 と一営業日ずつずらしていくと、3,752(=2,165+1,587)パターンできます(期間は最短1年間なので、最後の開始日は2022/04/01)。そのうち、2,165パターンでは毎日積立(Daily)がより安い平均購入価格で買えて、1,587パターンが毎月積立(Monthly)がより安く買えた結果となりました。
Average | Target 1 | Target 2 | Target 3 | Target 4 | Target 5 | Target 6 | Target 7 | Target 8 | Total # | Total % |
Daily | 2,165 | 2,526 | 1,451 | 673 | 392 | 865 | 1,221 | 822 | 10,115 | 57.52% |
Monthly | 1,587 | 1,562 | 1,293 | 391 | 0 | 199 | 1,523 | 914 | 7,469 | 42.48% |
平均購入価格の中央値:
次に、平均購入価格の中央値を比較します。例えば、2011/02/01〜2023/03/31の期間中に積み立てた場合の平均購入価額が10,000円、2018/02/01〜2023/03/31が11,000円、2021/02/01〜2023/03/31が15,000円だとしたら、この3つのパターンでの平均購入価格の中央値は、ちょうど真ん中に位置する11,000円です。
Median | Target 1 | Target 2 | Target 3 | Target 4 | Target 5 | Target 6 | Target 7 | Target 8 | Total # | Total % |
Daily | 2,339 | 2,670 | 1,482 | 625 | 387 | 740 | 1,336 | 1,083 | 10,662 | 60.63% |
Monthly | 1,413 | 1,418 | 1,262 | 439 | 5 | 324 | 1,408 | 653 | 6,922 | 39.37% |
考察3−2:平均利益率
平均利益率の平均値:
平均利益率の平均値で比較します。例えば、2011/02/01〜2023/03/31の期間中に積み立てた場合の平均利益率が60%、2018/02/01〜2023/03/31が20%、2021/02/01〜2023/03/31が10%だとしたら、この3つのパターンでの平均利益率の平均値は、30%( = (60%+20%+10%)/3 )。
下のWinスコア表の見方は、例えば、Target 1(eMAXIS全世界株式インデックス)の場合、3,752パターンのうち、2,136パターンでは毎日積立(Daily)がより高い平均利益率の平均値になり、1,616パターンが毎月積立(Monthly)がより高い結果となりました。
Average | Target 1 | Target 2 | Target 3 | Target 4 | Target 5 | Target 6 | Target 7 | Target 8 | Total # | Total % |
Daily | 2,136 | 2,480 | 1,432 | 650 | 392 | 824 | 1,185 | 803 | 9,902 | 56.31% |
Monthly | 1,616 | 1,608 | 1,312 | 414 | 0 | 240 | 1,559 | 933 | 7,682 | 43.69% |
平均利益率の中央値:
平均利益率の中央値で比較します。例えば、2011/02/01〜2023/03/31の期間中に積み立てた場合の平均利益率が60%、2018/02/01〜2023/03/31が20%、2021/02/01〜2023/03/31が10%だとしたら、この3つのパターンでの平均利益率の中央値は 20%です。
下のWinスコア表の見方は、例えば、Target 1(eMAXIS全世界株式インデックス)の場合、3,752パターンのうち、2,385パターンでは毎日積立(Daily)がより高い平均利益率の中央値になり、1,367パターンが毎月積立(Monthly)がより高い結果となりました。
Median | Target 1 | Target 2 | Target 3 | Target 4 | Target 5 | Target 6 | Target 7 | Target 8 | Total # | Total % |
Daily | 2,385 | 2,821 | 1,618 | 574 | 369 | 799 | 1,443 | 769 | 10,778 | 61.29% |
Monthly | 1,367 | 1,267 | 1,126 | 490 | 23 | 265 | 1,301 | 967 | 6,806 | 38.71% |
平均利益率のシャープレシオ:
平均利益率のシャープレシオで比較します。例えば、2011/02/01〜2023/03/31の期間中に積み立てた場合の平均利益率が60%、2018/02/01〜2023/03/31が20%、2021/02/01〜2023/03/31が10%だとすると、この3つのパターンでの平均利益率の平均値は 30.00%、標準偏差は26.46%なので、シャープレシオは 1.13になります(平均値 ÷ 標準偏差)。
下のWinスコア表の見方は、例えば、Target 1(eMAXIS全世界株式インデックス)の場合、3,752パターンのうち、2,568パターンでは毎日積立(Daily)がより高い平均利益率のシャープレシオになり、1,184パターンが毎月積立(Monthly)がより高い結果となりました。
Average | Target 1 | Target 2 | Target 3 | Target 4 | Target 5 | Target 6 | Target 7 | Target 8 | Total # | Total % |
Daily | 2,568 | 2,757 | 1,699 | 644 | 392 | 796 | 1,419 | 1,009 | 11,284 | 64.17% |
Monthly | 1,184 | 1,331 | 1,045 | 420 | 0 | 268 | 1,325 | 727 | 6,300 | 35.83% |
Level 3の結論
- 検証対象、検証開始時期、検証期間のパターンを十分に増やすと、毎日積立の方がより多くのパターンで有利な結果になった。
- 特に、平均利益率のシャープレシオで比較すると、64.17%のケースにおいて、毎日積立が有利であった。
まとめ
毎月積み立てるより毎日積み立てた方がより利益につながりやすく、17,584パターンで比較した結果、64.17%のパターンにおいて、毎日積立の平均利益率のシャープレシオが、毎月積立のそれを上回りました。時期などの条件によっては毎月積立の方が有利になる場合もあるけれど、確率的に、毎日積立の方が有利だとわかりました。これが、Level 3までの検証による結論です。
さて、この64.17% という確率をどのように捉えるべきでしょうか。
シンプルに考えると、64.17%は50%より多いので、どちらかと言えば、毎日積立を選択すべきでしょう。しかし、今日が月初だとして、今日この日にどちらかの選択を迫られた場合、迷わず毎日積立を選択できますでしょうか。今日たまたま安値で、今後しばらく上がる傾向にないと自信持てますでしょうか。筆者は正直その自信はありません。相場を読めるかどうかは別にして、毎日積立を選択することで有利になるのは、100回のうち64回程度しかなく、36回は不利になるのですから。それに、64.17%は、あくまで、施行を17,584回繰り返した結果的な確率であり、大数の法則により、施行をそれだけ多く繰り返せば 64.17%のケースにおいては有利になるというだけで、今日この日に選択したものは有利か不利かの2通りしかなく、不利になってしまった場合に、64.17%という確率は何の意味も持ちません。
ここまでじっくり読んでいただいた方はがっかり思われるかもしれませんが、ここまで徹底的にリサーチしても、スマートな判断だと胸張って言える結果ではなかった、というのが筆者の考えです。みなさんはどう思われますでしょうか。
しかし、ご安心ください。実は、この話には続きがあります。スマートな判断と明確なアクションにつながるものがあります。
詳細は、次の記事「Oliveフレキシブルペイを利用すると投信積立が断然有利!」にて。
少しだけ抜粋:
前回記事の検証の結果により、毎月積立による平均利益率のシャープレシオは、64.17%の確率で、毎月積立を上回りました。では、毎日積立をお勧めするのかといいますと、答えは Noです。64.17%という決定的でない確率より、もっと明確な手法があります。実は、毎月ならクレジット積立が可能です。つまり、現金で積み立てるのではなく、積立をクレジット払いすることで、クレジットでの買い物でポイント還元されるのと同じく、積立によるクレジット還元を受けられます。そのクレジット還元率を加味すると、実は、毎月積立の方が絶対的に有利になります!・・・