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投資信託の積立頻度「毎日」「毎月」どちらがより利益になる?
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投資信託の積立頻度「毎日」「毎月」どちらがより利益になる?

問題提起

投資信託を積み立てる際、積立頻度を選択する場面があります。例えば、SBI証券では、毎日/毎週/毎月/複数日/隔月の5択があります。

そもそも、投資信託を積立するメリットは、同じ金額を定期的に積み立てる、つまり、投資のタイミングを分散することで、ドルコスト平均法 (Dollar Cost Averaging, DCA) による価格変動リスクの軽減と利益増加が期待できることです。つまり、一定金額を一定間隔/頻度で購入することで、投信の基準価額が高い時は少ない口数を、逆に低い時は多い口数を買えることになり、全体として購入価格の平均化ができ、投信を安く買えることになります。ここまでは、教科書通りです。

さて、ここで素朴な疑問が湧きます。

毎日積み立てた方がより利益が出る?(ex. 1,000円/日)

それとも、

毎月積み立てた方がより利益が出る?(ex. 30,000円/月)

積立設定する際に、選択に迷うことも多いのでは。直感から行くと、より細かく時間分散した方が、より購入価格の平均化ができ、利益につながる気がします。つまり、毎月<毎週<毎日の順に利益が大きくなると思われますが、はたして?(実際、筆者は数的検証する前は、とりあえず直感で “毎日” を選択していました。)

まずは結論から

毎月積立より、毎日積立の方がより利益につながりやすい。

  • 17,584パターンで比較した結果、64.17%のパターンにおいて、毎日積立の平均利益率のシャープレシオが、毎月積立のそれを上回った。
  • ちなみに、毎日積立に対応している証券会社は、SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券、大和証券あたり。

ただし、毎月積立ならクレジット積立が可能となり、クレジット還元を加味すると、毎月積立の方がより利益になる。

具体的な検証

では、実例を用いて、具体的にかつ徹底的に検証してみましょう。下記は、一般向けというより若干発展的な内容です(本サイトのコンセプトはこちら)。

検証: Level 1

まずは、第一段階の検証として、とある投信で、とある日時より、とある期間だけ積み立てた場合に限定して、毎日積立と毎月積立を比較してみましょう。(ただの小手調べです。ここで両者に差が出ても、投信銘柄や開始日時や期間が変われば、結果も変わってくるので、ここでの結果はただのThe Very First Stepです。)

検証金額:[毎日積立] 1日あたり1,000円 vs. [毎月積立] 1ヶ月あたり 1,000円 X 該当月積立可能日数(営業日)

検証対象: 大和-iFree 日経225インデックス

検証期間: 2017/01/01 ~ 2023/04/03

考察1−1:基準価格と平均購入単価

まず、基準価格とドルコスト平均購入価格の比較です。基準価格は投信のその時点での市場価格なので、ドルコスト平均購入価格がそれより安いほど効率の良い投資だったといえます。

左のグラフは、毎日(毎営業日)に同じ金額(例では、1,000円)で、約6年間積み立てた場合。ほとんどの時期において、ブルーの基準価格よりオレンジの平均購入価格が安く買えています(2020/03あたりはコロナショックによる影響)。例えば、2022/01に一気に買おうとすると約19,000円かかるけど、2017/01から毎日積み立てた場合は約14,000円で買えていたことになります。うん、教科書通り、ドルコスト平均法 (DCA) は優れた投資法に見えます。

そして、右のグラフは、毎月の月初に同じ金額(例では、1,000円 X 該当月の営業日数。つまり、毎営業日に買った場合との月間投資額は等しい)で、約6年間積み立てた場合。同じく、ほとんどの時期において、ブルーの基準価格よりオレンジの平均購入価格が安く買えています。月一度の購入なので、平均購入価格は階段ギザギザ状になっていますが、傾向は毎営業日に購入する場合と大きく変わりません。

Standard Price (JPY)[Daily] DCA Price (JPY)[Monthly] DCA Price (JPY)
Average15,08612,98513,036
Median14,30612,92112,966
Last Day18,79314,61614,654
Standard Price vs. DCA Price

数値でもみてみましょう。上の表で、基準価格(Standard Price)に対して、ドルコスト平均法による平均購入価格(DCA Price)が、平均値(Average)でみても、中央値(Median)でみても、最終日(Last Day)でみても、安く買えていることがわかります。

なお、平均値(Average)とは、基準価格もしくは平均購入価格の平均であり、例えば、基準価格が10,000円、11,000円、15,000円と遷移した場合、平均値は12,000円になります( =(10,000+11,000+15,000)/3)。また、中央値(Median)とは、ちょうど真ん中に位置する値なので、11,000円になります。

そして、毎日(Daily DCA)と毎月(Monthly DCA)を比較すると、毎日の方が若干勝るものの、大きい差があったとは言えません(DCA Priceの2列を横で比較)。

考察1ー2:合計積立金額と評価金額

こちらは、合計積立金額と評価金額についての比較。ブルーの積立金額(投資金額)に対して、オレンジのその時点での評価金額が上回っていれば、評価利益があったことになります。

左のグラフは、毎営業日積立の場合。ブルーラインが、その時点での積立合計金額(ex. 毎営業日1,000円積立で、2017/01から始めた場合、2021/01では約1,000,000円)、毎営業日同金額の積立なので比例的に増えていきます。オレンジラインは、その時点での含み損益を含む評価額です(ex. 2021/01では約1,300,000円)。オレンジラインとブルーラインの差分が、評価利益あるいは評価損失になります。この場合、2020/03あたりのコロナショックを除き、ほとんどの時間軸において、評価額が積立合計額を上回っています(つまり儲かっています)。考察1−2でみたとおり、基準価格より安い値段で平均的に購入できているので、当然の結果です。

そして、右のグラフは、毎月積立の場合。月一度の購入なので、積立合計金額は階段ギザギザ状になっていますが、傾向は毎営業日に購入する場合とほとんど同じです。

大差ないでしょうけど、数値でもみてみましょう。ビジュアルと数値データは常にセットで評価します。

Invest Sum (JPY)[Daily] Realtime Value (JPY)[Monthly] Realtime Value (JPY)
Average784,500946,799932,184
Median784,500833,587822,992
Last Day1,547,0001,989,0221,982,543
Invest Sum vs. Realtime Value

考察1ー3:利益率

最後に利益率をみてみましょう。まず左は、毎営業日積立の場合。2020/03あたりのコロナショックでは、約-20%と大きく減少するものの、コロナショックの底で安値で積立できていて、その後のコロナラリーで復活し、ほとんどの時期において、プラス利益になっています。

一方、右は、毎月積立の場合。傾向はやはり毎営業日に購入する場合とほとんど同じです。

数値で比較すると、若干毎日の方が勝ります。Averageは全ての利益率の平均値で、Medianは全ての利益率のうち真ん中に位置する利益率を指します。

[Daily] Profit Rate (%)[Monthly] Profit Rate (%)
Average15.55%15.10%
Median13.14%12.75%
Last Day28.57%28.24%
Daily Operation

Level 1 の結論

  • Level 1の限定的な前提条件のもとで、ドルコスト平均法 (DCA)を使うことで、基準価格より平均購入価格を安く抑えられ、プラスの利益になった。
  • Level 1の限定的な前提条件のもとで、平均購入価格・評価額・利益ともに、毎日積立の方が毎月積立より有利だったが、大きな差があったとは言えない。

つまり、ドルコスト平均法 (DCA)を使うことに疑問はないが、積立頻度は毎日なのか毎月がよいのか明確な判断はまだ付かないということです。

次のページでは、Level 2: 対象を全世界の株式1,000銘柄以上、期間8パターンに広げて検証します。

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